NHK大阪のドキュメンタリー番組に、弁護士が被疑者取調べ録画記録を
提供した事実について、懲戒請求された件について考えてみた。
読売新聞の
報道では、
>検察側が取り調べの様子を録画したDVDを証拠提出。検察官が調書
>を読み聞かせる場面などが法廷で再生された
ということであり、本件映像内容は既に公判廷で再生済みのものである。
また、撮影されている被告人当人が承諾しており、第三者のプライバシー
の侵害もない。
たしかに「証拠の目的外使用」を禁止する第281条の4の条文に
照らすと、許容されている二つの場合である「一 当該被告事件の審理
その他の当該被告事件に係る裁判のための審理」「二 当該被告事件
に関する手続」のために利用したことにならないので、違法となろうが
実質的には侵害された法益はないというべきだ。
むしろ、放送内容からすれば、それをはるかに上回る公益的目的が
認められるのではないか。
記録が、被害者や第三者の取調べであった場合には問題であろうが、
形式的にこの規程から懲戒とするのは行き過ぎとしか思えない。
そもそも、上記の目的外使用禁止の立法目的は本件のようなケースを
想定していないはずだ。
国会答弁でも、次のように目的外使用の趣旨について触れている。
刑事訴訟法で目的外使用について罰則を設けましたのは、被告人
等については、自己に不利益な証拠を提供した第三者に対する嫌
がらせや報復等を目的として開示証拠の複製等を使用することが
考えられるということから、そうした事態を防止するためにこの目的
外使用の規定を設けたわけでございます。
(平成20年6月10日参議院法務委員会大野恒太郎氏
(当時法務省刑事局長)による答弁)
むしろ、証拠は検察のものではなく、真実発見の「公共の財産」なの
だから、公益的目的に利用された場合には違法性なしというべき
だろう。