という冊子を読んだ。
奈良弁護士会が3月に発行したもの。
わずか26ページの薄いものだが、とても心に残ったので
紹介したい。
この冊子は、昨年亡くなられた、繁田實造先生に捧げられ
ている。繁田先生は龍谷大学を退職後、奈良弁護士会に
所属され、わずか4年ほどしか登録されておらず、扱われた
事件もわずか20件ほどであったという。
にもかかわらず、なぜ奈良弁護士会がこのような冊子を
作られたのか。
それは、奈良の法曹の方々が、繁田先生を「日本一の
国選弁護人」と評されていたからだという。
現実の裁判でもしばしば被告人の更生に資するというよう
な言葉が用いられてはいる。 しかし、ここまで、一件一件
の事件の被告人の更生のために心を砕き、足と時間を使った
弁護というのはそうそう出来るものではないのであろう。実務を
知らない管理人が言うのも何だが、それは、冊子で紹介され
ている被告人との往復書簡や、先生の残されたメモなどの
手控えなどから、日々の活動の一端から強く感じられる。
ある被告の関係者が、繁田先生に「どうしてこんなに被告人の
ために一生懸命やるんですか」と問うたのも、もっともだろう。
その答えは、冊子に寄せられた東尾裁判官と高野嘉雄弁護士
のことばから見えてくるように思う。 裁判官も刑事弁護のエキ
スパートも、その情状弁護の徹底した、心のこもった活動に
心底経緯を表し、多くの弁護士がそれに連なることを願って
いることがよく伝わってくる。
とりわけ、東尾裁判官が奈良地裁で開かれた一審強化に関する
三者協議で繁田先生の活動について語られた内容を高野弁護士が
紹介された部分は感動的ですらある。
奈良弁護士会がぜひホームページを通してこの冊子を全国の
法曹、そして法曹を志す若い人たちが読めるようにしてもらい
たいと希望するものである。
そして、重罰化や制度改革ではけっしてなしえない、更生のため
に機能する、刑事司法のオルタナティブがあることを多くの市民
にも知ってもらいたいと願う。
PS
タイトルに誤字があった。複数の方からご指摘いただき訂正しました。
きちんと読んでいただいているのだなあ、と少々感動:-)
(4月11日午前10時40分記)