ボツネタ経由の、
町村ブログ経由。
「消えた判例」の怪 最高裁HPの浅知恵
http://facta.co.jp/article/200702052.html
わが国における判例公開の現状と、その内実が
きわめて鮮明に現れた事態であろう。
記事も指摘していることだが、わが国における判例公開に
おける致命的欠陥は、以下のとおりだ。
1.公刊(公開)判例の絶対数が少ない。
2.公刊(公開)基準が明確でない。
3.公開判例選定者が不明確。
4.公開判例の選定プロセスが不透明。
5.判例引用法(サイテイション)が公式に定められていない。
これまでも本ブログで繰り返し述べてきたことだ。
司法制度改革審議会の意見書でも、全面公開へと指摘を
受けているのに、ただでさえ少ない公開判例を、以後になって
削除するということは極めて問題が大きい。
公開される判例が少ないことの何が問題なのか?
1.実務的な問題
先例となる判例の所在が不明となり、以後の裁判での資料が
限られる。同じ判断に至るためにコストが高まる。同じ調査が
繰り返されムダ。
2.学術的な問題
検討すべき判例の存在が認識されず、一部の判例だけが
研究の対象となり、資料的な正確性を欠く。
3.政治的な問題
裁判の公開は、法廷の公開だけではなく結論である判決も
含めて考えるべき。司法部の判断をブラックボックス化して
しまう。
4.法的な問題
提訴する場合に、他の判例を参考にできないし、同じ審級
で異なる裁判例が出ていれば、上訴理由とできるのにその
情報が遮断されてしまう。
など、数多い。 まず、何より基本的に「判例も法情報のひとつとして、
国の知的公共財の一種」という姿勢が不可欠である。
判例の公開を求める各界の意見(経済界、労働界、消費者団体、
人権団体、行政)を紹介しておこう。
“インターネットによる全法令の公開や判例検索サービスの充実等の情報公開の強化 “
経済同友会「司法制度改革審議会に望む」 1999年11月26日
“裁判所が保有する統計や判例などのディスクローズは、企業にとって自社で抱えている類似案件処理の方向性を予測したり、今後起こりうるトラブルの予防を図るうえで必要である。したがって、電子媒体等を活用しながら、積極的に情報公開を実施すべき ”
東京商工会議所意見書1999年12月20日
“インターネットを活用した判決情報の早期公開を促進すべき ”
経営法友会提言1999年12月21日
“法律サービスの透明性を高め,情報アクセスを改善する上では,判例情報の電子媒体などによる公開,訴訟手続の利用コストなどについて検討することが必要 ”
通商産業省「2000年通商白書」第3部 グローバル経済における日本の針路より2000年5月
“IT革命によるインターネットを通じた情報公開は急速に進展しており、裁判所においても労働事件の判決などについて、インターネットによって公開すべき”
日経連意見書2000年9月25日
“判例を容易に入手できることは国民の権利である。裁判所のIT化推進のメニューとして、インターネットを利用して低廉な費用で判例を検索・入手できる環境をすみやかに実現することを希望する”
経営法友会提言2001年1月18日
“判決内容に関する情報について、市民の知る権利を保障し、裁判所の市民に対する説明責任を果たすため、判決及び理由を付すべき決定は原則としてすべてインターネット等により公表することを提案いたします”
自由人権協会パブリックコメント2001年1月24日
“判例情報については利用者が検索しやすい形でデータベース化し、インターネットで公開すべきである”
全国消費者団体連絡会意見書2001年8月29日
”審議会意見を踏まえ、差し当たり、今後行われるすべての判決(判例情報)は、電子情報化してオン・ラインで提供すべきである。過去の判例情報についても、可能な限り包括的に素材を収集したうえで電子情報化によるオン・ライン提供を図るべく、その方策を検討すべきである。”
司法制度改革と先端テクノロジィ研究会提言(2004年1月)
“司法のユビキタス・アクセスの実現と司法手続きの効率化をめざし、IT技術を活用して、判例のデータベース化などとともに「e-裁判所」の実現に向けた検討を行う”
連合2006~2007年度『政策・制度 要求と提言』2005年7月
“法令・判例情報の電子化及びデータ標準の策定、裁判手続・裁判記録の統合的な電子化”
経団連「次期ICT国家戦略の策定に向けて」2005年10月
“法令や裁判例、国会会議録等の法情報に対して国民が自由にアクセスできることは、国民が民主的討論や司法手続に主体的に参加するための不可欠の前提”
総務省「ユビキタスネット社会の制度問題検討会報告書 」2006年9月