英国には独立した、中立的な法科学研究所がある。我が国の科警研が警察に附属しているのに対して、独立した組織であるのが特徴だ。政府機関でありながら、警察には属さないため、被疑者や再審請求者のためのサービスも行える。
Forensic Science Service(FSS)
http://www.forensic.gov.uk/
英国政府は、このFSSを2012年までに閉鎖すると発表、波紋が広がっている。BBCニュースから。
Forensic Science Service to be wound up
http://www.bbc.co.uk/news/uk-11989225
政府発表では1600人が働くこの施設を閉鎖することで、年間、7000万ポンド(100億円以上)を節減できるということだが、その影響は甚大である。
専門的でレベルの高い、集約的な機関が失われると、DNA型鑑定や法科学鑑定のレベルを低下させ、ひいては司法の質を劣化させるという懸念を紹介する、デイリーメイルとテレグラフ紙の記事。
Closing Forensic Science Service 'will put justice at risk', say DNA experts
http://www.dailymail.co.uk/news/article-1342125/Closing-Forensic-Science-Service-justice-risk-say-DNA-experts.html
Justice system 'threatened by closure of Forensic Science Service'
http://www.telegraph.co.uk/science/science-news/8227706/Justice-system-threatened-by-closure-of-Forensic-Science-Service.html
民間サービスを利用することで最も大きな痛手を被るのは、コストをかけられない再審請求者であるとの指摘もある。ガーディアン紙の記事は、再審請求審査をおこなう、独立した機関である「刑事再審委員会」はFSSの閉鎖で無実証拠を探索する手段を絶たれてしまうと懸念する。
Criminal cases review commission: the last bastion of hope
http://www.guardian.co.uk/law/2011/mar/30/criminal-cases-review-commission-inside
米国では、FBIや警察の法科学部門のずさんが近年、重大な問題になっており、異例にも米国政府が解決に乗り出すことが検討されているが、英国のFSSは世界的にもひとつのモデルであっただけに、今後、国際的にも大きな波紋を呼ぶだろう。