先日は、合衆国最高裁判決が写真を引用した珍しいケースを紹介したが、今度は、高等裁判所に当たる、連邦巡回裁判所の判決が、映画の台詞を引用するという、またまた珍しい判決が今週出された。
殺人事件の裁判の評議の途中で、「偏見」ある陪審員が解任されたケースで、その判断の適法性が争われたケース。 英語ではこれを"holdout juror"という。
巡回裁判所は、陪審員を解任した事実審裁判官の判断を取り消し、原告の訴えを認めているが、その際に、映画「12人の怒れる男たち」のシーンを引用し、有罪とされた原告について憲法修正第6条が保障した「公平な陪審」によって裁かれる権利が侵害されたとしている。 全員一致。 なお、言うまでもないが、台詞を理由付けにしているわけではない。念のため。
http://www.ca9.uscourts.gov/datastore/opinions/2011/05/23/07-56127.pdf
結論のところで、効率性を犠牲にしても被告人の憲法上の権利を守ることが大事だ、と念を押している。 裁判が陪審員(わが国でいえば裁判員)のためにあるのではない、という当たり前のことを思い出させる。 裁判員裁判を担う、裁判官の方々にも是非ご一読願いたいものだ。
"The sacrifice of efficiency for the preservation of liberty is central, however, to the safe- guards the Constitution affords criminal defendants. "
WILLIAMS v. CAVAZOS, No. 07-56127 D.C. No. CV-03-02691-GW
(23 May 2011, 9th Circuit Court)
PS
それにしても、判決が出るのが早いですね。 速攻。
布川事件の判決は、当日は要旨だけ。 いつになったら(だいたい何処に?)掲載・公刊されるのでしょう。。。
裁判所webでは、下級審判例で5月分の判決は一件もなし(本日5/27現在)。最高裁で一件だけ。知財は10件以上出ていますが。