さて、先週から今週にかけて、米国を震撼させた「国内テロ」と呼ばれた
ボストン・マラソン爆破事件。
被疑者(マスコミ報道では「容疑者」)一名死亡、一名逮捕・負傷という
結果となり、この負傷した被疑者が取調べを受けているというニュースが
伝えられている。
とりわけ、黙秘権の告知や弁護人依頼権の告知をスキップするという
「without Miranda(ミランダの権利告知の省略)」が焦点となっていた
が、既に(報道によれば)当初の尋問が終わって、通常手続の尋問が
なされているということであり、ミランダ告知もなされ、弁護人が付いた
模様だ。
では、爆破事件の被疑者の尋問(取調べ)の様子は録音録画されるだ
ろうか? (マスコミ報道ではほとんどこうしたアングルでの報道はない
のでここで書くことに若干の意味もあるだろう)
まず、爆破事件が連邦の「テロ犯罪」として容疑を受けているわけだ
からFBIの尋問を受けたはずである。 この場合、結論から言えば
録音録画の義務はない。 しかし、録音録画していないかと言えば
それは「不明」という他ない。 これだけ重大犯となれば、その尋問
記録は(少なくとも録音は)なされているだろう、というのが管理人の
観測である。
FBIには、現時点では被疑者取調べの録音録画義務は判例上も
法令上も存在しない。 が、そのことが録音録画がなされない理由
とはならない。
では、「殺人、傷害等」の州の事件としての取調べはどうか?
マサチューセッツ州では、いかなる法令も取調べの録音録画を要求
していない。 しかし、州最高裁判所が1996年に録音録画しなかった
場合に証拠排除の制裁を科すことを宣明したため、実際には州警察は
重大犯罪なら必ず取り調べを録音録画している。
実際の現場(マサチューセッツ州警察)でのガイドラインは、(奇しくも)
2年前に刊行した、
『取調べの可視化へ!』(日本評論社、2011)に
掲載されているので日本語で読むことができる。
マサチューセッツ州:取調べ録音・録画ガイドライン例/(訳:岩川直子・指宿 信)
これによれば、同州では被疑者が録音録画を拒否した場合には、
この意思表示を取調官は記録し、拒否に関する書面を作成して
スイッチを切ることが求められている。
実際に、病床にあると伝えられる被疑者がどのような態度を取った
のかは現時点では不明であるが。