先週の月曜日、合衆国最高裁が、死刑事件における証拠開示問題について画期的な決定を出した。
最高裁に上告していたのはルイジアナ州の死刑囚Wearry氏。同人が死刑判決を下された公判において、無罪方向の有利な証拠を検察側が隠していた。州最高裁は同人の訴えを退けていたのに対して、合衆国最高裁がこれを適正手続違反であるとして破棄、再審を行うよう命じたのである。
ロイター電
Supreme court reverses Louisiana death row inmate's conviction
http://www.reuters.com/article/us-usa-court-deathpenalty-idUSKCN0W9216
ブルームバーグ電
Brady Error Nets New Trial for Man on Death Row
http://www.bna.com/brady-error-nets-n57982068337/
事案は、合衆国最高裁が検察官は被告人の無罪方向証拠開示義務を有するとした先例「ブラッディ判決」違反が争われたもので、申立自体は珍しいものではないが、今回、最高裁は異例にも口頭弁論を開かずに適正手続違反とする決定をくだした点が注目される。
従来であれば、口頭弁論を開いて州側と上告人側の意見を聞いた上で、「証拠の不開示によって陪審の有罪無罪の判断が変わった可能性があるかどうか」の検討を行う、というのが最高裁の審理の定石であった。
ところが、今回、合衆国最高裁は(アリートとトーマスの反対があるものの)書面審査だけでかかる判断を下したのである。これは、本件事案では二人の同房者証言が中心的証拠であるという、あまりにも脆弱な証拠構造であった(最高裁は「トランプで組み立てたほど脆い」という表現を使っている)という本件固有の事情と、検察官の非倫理的な態度がこんにちの大量の冤罪発覚現象の最大の原因であるという社会情勢の二点があるのではないか。
袴田事件での警察検察の証拠隠し問題を例に引くまでもなく、日本の再審事件にも参考となる事案と言えるだろう。現在請求されている再審事件の一日も早い全面的な証拠開示と、そうした法整備が求められるのは言うまでもないが、証拠を隠して死刑のような重大な刑罰を獲得した事件については速やかに適正手続違反による再審開始を法律で許容するような制度改革の必要性を示唆していよう。
決定文の全文は
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