昨日から各紙に報道されている件。
<日経>
裁判打ち切り認めぬ判決、見直しか 愛知2人刺殺で最高裁
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG30H8W_Q6A930C1CC1000/
<産経>
精神疾患の被告の殺人事件の裁判 「打ち切り」も 最高裁が弁論期日を指定 差し戻し判決見直しか
http://www.sankei.com/affairs/news/160930/afr1609300021-n1.html
<時事>
精神障害の被告、裁判打ち切りか=愛知2人殺害で11月弁論—最高裁
http://news.biglobe.ne.jp/domestic/0930/jj_160930_7218499365.html
<NHK>
裁判打ち切り 最高裁で弁論へ
http://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20161001/3134141.html
言うまでもないが、「訴訟能力」の有無が裁判を打ち切らせる原因と
なるかどうかという問題である。記事にあるように法律には定めはない。
従って解釈論に完全に委ねられていて、受験生であれば公訴権濫用論
に落とし込めるのかどうか悩む論点であろう。
これまでいくつもの文献で、管理人は打ち切り処理を主張してきている。
最初は1995年の『刑事手続打切りの研究』(日本評論社)で、2010年
にも続編『刑事手続打切り論の展開ーポスト公訴権濫用論のゆくえ』
(日本評論社)を出した。
とりわけ後者の第6章「訴訟無能力と手続打切り」を参照いただきたい。
最近でも、非常にタイムリーなことには、今月、現代人文社から出版された
「訴訟能力を争う刑事弁護」でも批評を掲載した。
なお、学界も多数説は、訴訟能力の回復可能性がない場合について
手続を打ち切るべきだとする積極説に立つ。だが、これまで裁判所は
なかなかそうした判断に至らず、公判を停止して様子を見るという
態度であった。
昨年の3月に名古屋地裁岡崎支部が公訴棄却という打切り判断をした
ところ、裁判所にこのような措置が定着するかと期待されていたのだが、
名古屋高裁がこれをひっくり返して破棄してしまったため、弁護側が
上告していたもの。
管理人も弁護団の依頼により高裁に意見書を提出していたので、ある
意味では関係しているとも言えるので関心が大きいのだが、最高裁が
控訴審の判断を見直すとしてもどのような理論構成で結論を示すのか、
手続打切り論の見地から11月の弁論、そして来年には出るであろう
判決は、学界でも法曹界でも見逃せないものとなるだろう。
受験業界も、公訴権濫用論に代わる規範を欲しているであろうから
今回出される最高裁判決が注目を集めるに違いない。
そういうわけで、これまで学界ではしばしば、
「ポスト」公訴権濫用論なんて意味あるんですか?
公訴権濫用論だけで十分でしょう?
などと聞かれることもあったが、いよいよ手続打切り論、すなわち
"ポスト公訴権濫用論"の議論を再開すべき時に来ているように思わ
れる。
個人的には、GPS案件も上告にかかっており、ますます最高裁の動き
から目が離せない状態に。いずれにせよこの件は続報予定。