令状なしのGPS捜査「違法」 最高裁が初判断
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG15H3Y_V10C17A3000000/
本日、午後3時から最高裁大法廷で先日法廷弁論が行われたGPS利用捜査事件の上告審判決の言い渡しがあったので傍聴した。
のっけから「上告棄却」だったので、一瞬がっかりしたが、そのあとに続く憲法35条のプライバシー保護の範囲の定立、GPS利用捜査がそうした範疇に入るという当てはめ、そして、特別の立法が必要との立論には圧倒された。予想される中で最上級の判断であった。
すでに最高裁ホームページに判決はアップされていて誰でもアクセスできる。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/600/086600_hanrei.pdf
判決の中で注目されるのは何と言っても、憲法35条の「保障対象には,『住居,書類及び所持品』に限らずこれらに準ずる私的領域に「侵入」されることのない権利が含まれるものと解する」というプライバシーの範囲を「住居」から踏み出して、「準ずる」カテゴリーを設定したことである。
つまり、公私二元的なプライバシー区分から最高裁は離脱したのだ。それはつまり、公道上であってもプライバシーの保護が及ぶ、ということに繋がっていく。
判決は、「GPS捜査は,個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するもの」と明確に位置づけ、強制処分の性質を持つことを明らかにした。しかし、今後、GPS利用捜査に限らず、「私的領域」に侵入するあらゆるテクノロジーを使った捜査手法は、同様に規制対象に含まれると考えてよいだろう。そういう意味で、この判決は発展性を持ったものだ (ちなみに最高裁は、これまで「私的領域」という用語を刑事の判決で用いたことはないし、民事でも公文書開示の事案で2件ほど見られるだけだ。従来考えられてきたプライバシー概念は変更せず混乱を回避するために、公私の中間領域として「私的領域」という用語を用いたと見ることもできる)。
となれば、GPS捜査を規律するには、令状が必要だとして、検証許可状の可能性を検討し、類似性は認めつつ「「検証」では捉えきれない性質を有する」と結論づけ、令状発付には「(捜査の公正の担保という)問題を解消するための手段として,一般的には,実施可能期間の限定,第三者の立会い,事後の通知等様々なものが考えられる」と立法にあたっての具体的な検討事項まで列挙している点が目を引く。
これまで、最高裁判所が特定の捜査手法に対して立法の必要を示したことは例がない。今回の判決が反対意見すら付かなかったことは、最高裁の裁判官たちが、位置情報の承諾のない収集といった、テクノロジーを使った新たな情報収集型捜査について危機感を持ったことの現れであろう。
今後、立法府が速やかに対応する必要があるが、その際には、監視装置全般に規制が及ぶような「追尾監視装置規制法」といった特定技術だけでなく包括的に規律できるような法律を望みたい。