'CSI effect' reaches into real courtrooms
http://www.cnn.com/2006/LAW/01/16/tv.law.ap/index.html
CNNが、米国で大ヒットしている二つの刑事事件ドラマ、CSIとLaw & Order
が、実際の刑事裁判に影響を与えている様子を伝える。
CSIは、警察の鑑識課が難事件を科学的証拠によってつぎつぎと解明する
人気ドラマで、我が国でもケーブルTVなどを中心に放映されている。
日本語サイト
http://www.watch-csi.jp/
Law & Orderは、NYが舞台の警察・検察の双方が主人公となるドラマで
こちらは長寿番組。現在、第16シリーズまで来ており、Law & Order
SVUという兄弟番組まで出来ている。
NBCサイト
http://www.nbc.com/Law_&_Order/
こうしたドラマのお陰で、視聴者、すなわち陪審員が、刑事裁判において
科学的証拠がないと有罪を認めない傾向がある、というのである。だが、
実際の事件はドラマと異なり、多くの事件では実際には科学的証拠は
得られないのが現実。 いささか検察には不利な面がでていることを
伝える。
が、記事では言及されていないが、他方で、検察が科学的証拠、それも
高額なコストのかかる証拠を利用する場合に、被告人側が同様の証拠
を調達できない現実があって、弁護権の保障の問題として争われている。
いずれにせよ、科学的証拠が存在するなら、これをどう評価できるかが
重要。これが日本へのインプリケーションだろう。
一昨日、放映された「映像06」でも伝えられていたように、昨年、再審
開始が決まった(現在検察側抗告中だが)、布川事件では、現場に
落ちていた毛髪の鑑定結果(被告人らと一致するものはなし)が、再審
請求審まで(30年ものあいだ!!)開示されることはなかった。
また、多量の指紋が残っているのに被告人らのものはひとつとして
なかった。
そうした証拠の提示と評価の問題のレベルに止まっている我が国は、
先進国としての司法に価いしないだろう。
請求審では、請求人の桜井さんが、ようやく開示されてきた毛髪鑑定
結果を前にして、大変な剣幕で検察側を糾弾し、まだ隠している証拠が
あるだろう、と激しく抗議をしたとき、検察官は一言も反論できず、ただ
もう隠していない、もうない、としか答えられなかったと伝えられている。
一昨年の刑事訴訟法改正(昨年11月施行)では証拠開示手続が整備
されたが、まだ開示は弁護側の請求と検察側の開示相当判断を経ないと
おこなわれないことになっている。
今後、あらゆる科学的証拠とその鑑定結果はすべて被告人に【自動的に】
開示するという「証拠開示」実務の定着がまず求められよう。
この問題については、昨年末に公刊された下記の論考で詳述した。
「証拠開示法制の批判的検討」
小田中聡樹先生古稀祝賀・民主主義・刑事法学の展望(上巻)
(日本評論社刊、2005.12)